Native Instrumentsが開発した「STEMS」というオーディオ・フォーマット

STEMSとはNative Instruments社が開発した新オーディオ・フォーマットです。

Rexファイルが一つのファイルを縦に切るフォーマットだとしたら、STEMSはファイルを横に切るフォーマットと言えるでしょう。

STEMSは何ができるの?

STEMSを使うと音楽の各音楽パート(ステムと言う)を独立してコントロールすることができるようになるため、DJプレイに適したファイルフォーマットになっています。

通常の音楽ファイルを再生したらステレオミックスファイルが再生されるので、「ドラムだけ止めたいな」とか「ドラムだけにハイパスフィルターをかけたいな」とか「ボーカルとベースだけを再生したいな」ということができません。

これはステレオミックスダウンのストーリーはあらかじめ制作側によって決められてしまっているので、DJは既に決められているストーリーを再生するしか方法がないのです。

しかし、STEMSによって各パーツを独立していじれるなら話は違います。ステムがドラム、ベース、メロディ、ボーカルの4つのパートに分かれていたとしたら、ドラムだけを止めることもできますし、ドラムだけにハイパスフィルターをかけることもできますし、ボーカルとベースだけを再生するようなことも簡単にできます。

各パートを独立してコントロールできることでDJは多彩なプレイができるようになるのです。

STEMSの仕様

STEMSは4つのステムファイルとステレオミックスファイルの合計5つのトラックを一つのファイルにまとめることができるようになっています。

ファイルの拡張子は.mp4なので、STEMSに対応していないオーディオプレイヤーで再生した場合、五つ目に乗せたステレオミックスのファイルが再生されるようになっています。

STEMSに対応しているソフトウェアを使えば、4つのステムファイルを独立してコントロールすることが可能になります。

各ステムファイルのクオリティですが、AAC 256kbps VBRかApple Lossless audio(ALAC)から選択することができます。

AAC 256kbps VBRとは言っても、それが4つあるので、単純にステレオミックスファイルのAAC 256kbps VBRでエンコードされたファイルより音質は高いと言えます。

STEMSの作り方

STEMSの作り方は簡単です。

必要なパートだけをSoloにして、ミックスダウンします。分け方はそれぞれだと思いますが、ドラム、ベース、メロディ、ボーカルが主な分け方になるでしょう。

そのプロセスを4回やって、ステムファイルを4つ用意したら、Native Instrumentsが配布しているフリーの「Stem Creator」でファイルを合体させれば良いのです。この時点でステレオミックスのファイルも書き出して一緒に乗せる必要があります。

ステムファイルを作るときの注意点ですが、マスターやBusにイコライザーやリバーブなどのエフェクトを使っている場合、エフェクターの成分を各ステムファイルに含めるようにしましょう。

STEMSのメリット

STEMSは何と言ってもDJ用です。DJはこれまで以上にすごいプレイを見せてくれるようになるでしょう。

いままではグローバルにエフェクトやボリュームコントロールするしかなかったのに、各パートを好きなようにいじることができるからです。

例えば、MPCが叩けるDJならその場でドラムを組んで、ドラムだけを自分のものに差し替えたり、ボーカルにだけファンキーなエフェクトを掛けて観客を驚かせたりするようなことが可能になります。

STEMSのデメリット

音楽プロデューサーやサウンドエンジニアは従来のミキシング・マスタリングのやり方を変えないといけなくなるので、変化に対応していかないとついていけなくなります。

マスタリング済みファイルからステムファイルだけを抽出することはできないので、ミックスからやり直すことが必要になってきます。

つまり、今後の楽曲制作では4つのステムファイルの書き出しとステレオミックスファイルの書き出しを意識した上でミキシングをしていくことが必要になります。

また、アルバムを制作していて(複数曲あって)、それらの曲全てに対してステムファイルを作りたいとなると、曲間のバランスを整えるためにステムマスタリングを行わなければいけなくなります。

従来はミックスダウンしたステレオミックスファイルをマスタリングエンジニアに渡せば、マスタリングエンジニアが自分の好きな環境でマスタリングして、完成品だけ納品されてくるため、最初にステレオミックスファイルを渡すことだけを考えれば良かったわけです。

しかし、ステムマスタリングを前提に楽曲制作していくと話が変わってきます。ミックスをいままで以上に丁寧にやらないといけなくなるため、トラックメイカー、ミックスエンジニア、マスタリングエンジニアが使用ソフトウェアやプラグインを統一しなきゃいけなくなったりします。

あとはミックスエンジニアとマスタリングエンジニアの役割がかぶるようになるので、どちらかはクビになる恐れがあります(汗)。

さらに、「いつのタイミングでステレオミックスファイルを書き出すのか」、意見が分かれるようになります。

ステムマスタリングのエンジニアに最後の最後にステムを使ってステレオミックスファイルを書き出してもらうのか、ステムミックスを書き出す時にステレオミックスファイルを一緒に書き出してしまうのかによって音のニュアンスも変わってきます。

音のニュアンスを統一したい人は前者を選ぶでしょうし、ステムからマスタリングをするのを嫌う人は後者を選ぶでしょう。難しい問題です。

私はステムマスタリングのエンジニアに最後の最後にステムを使ってステレオミックスファイルを書き出してもらうのがベストだと思いますが、皆はどうすることやら。

小さな制作チームなら機動力があるのでどうにでもなると思いますが、大きな規模のチームになると小回りが利かなくなり、失敗することもあるでしょう。

とにかく変化が大きいので、順応しないとついていけなくなってしまいます、

まとめ

STEMSはDJやユーザーにとっては最高のツールですが、制作者側にとっては頭が痛い話です。

さあ、制作側はDJやユーザーの新しいニーズに応えていくことはできるのか?

全ては時間が解決してくれることでしょう。

作成者: Genx(ゲンクス)

当サイトの管理者です。音楽作っています。フリー音楽素材を配布したり、音楽素材のライセンスを販売したりしています。また、「ブロックチェーンを活用して音楽活動できないかな?」と模索しながらやっています。LBRYやAudius等のブロックチェーン型プラットフォームに進出したり、BCHブロックチェーンで「ASOBIトークン」という名前の独自トークンを作って配布したりしています。よろしくお願いします。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です